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ホームレスに生きてきた証を。社会から隔絶された存在を支える大きな希望  NPO法人山友会 油井和徳

2015.05.19

ホームレス問題。

東京や大阪などの大きな都市では駅のホームや公園にブルーシートをかけたり、ダンボールを敷いて暮らしている方たちがたくさんいることに目を背けてはいけないと思います。

東京にある山谷地区でホームレス支援を行っている認定NPO法人山友会の油井さんに話を伺ってきました。

バブル崩壊後の90年代、山谷に溢れるホームレス

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山谷地域とは南千住駅の付近、台東区から荒川区にかけて隅田川沿いの地域のことを言います。江戸時代からの都市化でえたとかひにんと呼ばれる人たちが臭いものには蓋をするといった形で都市の外の方に追いやられてきたという歴史的な背景もあります。また、戦後すぐに上野駅周辺に集住していた浮浪者や戦災者が強制移住させられテントの村ができました。そこの運営を任されたのが山谷地域の木賃宿(素泊り旅館)を運営していた人たちで、その人たちの取り組みでテント村が旅館(ドヤ)街と変化していきました。

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ここはいろは商店街といって、昔は日雇い労働者であふれていた場所です。今ではだいぶその数も減ったため、こんなガランとした静かな商店街になっています。

なぜそんな場所がホームレス状態の人が溢れる場所に変わってしまったのでしょうか?
 

高度経済成長期後、日本はバブル崩壊によって多くの建設会社が倒産することになります。その際にここ山谷にいた多くの日雇い労働者の方たちが一気に職を無くすこととなりました。そして、今まで泊まっていたどやなどに泊まるお金もなくなり路上生活する人が増えました。2004年には全国で約2万5千人の方が路上生活をしていたという風に言われています。

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商店街の隣にはこのような幟があり、日雇い労働者を擁護する活動や動きはまだまだ行われていました。日雇い労働者を狙って、賃金を安く仕事をさせる人たちも増え、その被害は現在でもあるそうです。ホームレスの問題にはこんなにも関連した歴史があることを知りませんでした。ただ、お金が無くなって路上生活せざるを得ない人がホームレスになっているんだとばかり思っていました。

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ホームレスの方は一度、ホームレス状態に陥るとなかなか抜け出せないという問題もあります。仕事をしてお金を稼いで、家を借りるといっても元々住所がないため仕事を得ることができなかったり、障害を持っていて十分に仕事ができなかったり、生活保護を受けていても保証人がいないため家を貸してもらえないなどの問題もあります。

また、ホームレスには路上生活をしている人だけでなくて、自分の決まった住居を持っていないという人もホームレスだという話もあります。友人の家を転々とする人、ネットカフェを住処としている人、都会では実は見えないところで多くのホームレスが存在しているのです。

関係を築き、孤独を無くす

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我々、山友会は主に4つの活動を行っています。この活動が始まったのは84年に住民票や保険証を持たない日雇い労働者の体調管理ができる場所としてクリニックを始め、そこから徐々に路上生活者に対しての炊き出し、また生活相談、この近くにある山友荘(単身での生活が難しい人への住まいの提供)のような活動をしています。

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我々がこのような活動を通して、最も大切にしているのは”孤独”を無くすということです。孤独、低所得というキーワードは自殺するトリガーになりやすく山谷地域での自殺が多いのもそのためだと考えられます。だから我々は生命に関わるセーフティーネットとしての役割を担う活動を行っています。

生きてきた証を残し、亡くなってからも繋がっていくために

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約4ヶ月ほど前にインターネットを通して資金調達をするクラウドファンディングに挑戦をし、無事に目標金額の支援を達成することができました。応援してくださったみなさん。本当に有難うございました。

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私たちが関わった身寄りのないホームレスの方が入れる墓を作りたいという想いを形にすべくプロジェクトに挑戦しました。今まで、ホームレス状態になってしまったほとんどの方は身寄のなく、亡くなってしまった後は無縁仏としてまとめて葬られることになっていました。しかし、それでは生きて残された、亡くなった方を知っている人はその人に会いに行くことができません。また、死んだ後に行く場所がないということで自分は必要とされていない存在なんじゃないかと感じている人も多くいます。だから、そんな想いをつなぐために我々と関わった身寄りのない方のためのお墓を作ったのです。

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このプロジェクトに賛同してくれる人の想いをつなぐキャンペーンなどもFacebookやTwitterを使ってやらせてもらいました。今回のプロジェクトでは資金を集められたことよりもたくさんの方に共感していただけた結果としてもらえるきっかけを作れたことが最大の成功だと思っています。

話を伺うまで、なぜ墓をつくることに意味があるのか疑問がありました。しかし、一人一人の気持ち、そして繋がっていくと言うことがこのプロジェクトの目的だと知って、素晴らしい活動だし、このような感覚がもっと世の中に広がればいいなと純粋に感じました。

平和に感じるこの世の中にもたくさんの問題があることを忘れてはいけないんだと改めて思いました。

知ること、認めること、考えること

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やはり、たくさんの方にこの状況とそれに至る経緯を知ってもらう必要があると思います。ホームレスの方は好きでこんな生活をしているわけではないし、這い上がりたくても這い上がるためのハードルが高すぎるんです。だからこうして、何かしらの支援を必要とするし、支援をしていかなければ社会からなかったことにされるだけなんです。”なかったことにされる”本当にそれでいいんでしょうか?

本当に同感です。社会は綺麗なものは認めるけど、そうじゃないものは排除する。そんな文化がある気がします。根本的な問題には教育の問題は大きいと僕自身は考えています。なぜ、現在の道徳の教育でホームレスのことを取り上げないのか。なぜ綺麗に作った感動を呼ぶストーリーが道徳のメインのカリキュラムなのか。疑問です。

本当に必要なのはリアルを知ることなんではないのか。それがあることを認めることではないのか。そして、そのことについて考えることが必要だと考えています。

臭いものには蓋をする。そんな時代もう遅れてるよ。

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矢野 大地 (やの だいち)


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